ある時、上司に連れられてお寿司屋さんに行ったのです。私の会社は外食産業業務で、私は個人で飲食店を経営していたのにも関わらずハンティングされて会社に入ったので、上司も私にはちょっと気を使ったみたいなんです。私は当たり前で、食にとても興味があるわけですよ。その私をお寿司屋さんに連れて行ってくれると云う事は、食べてもいい、食の勉強会なんだ、と勝手に解釈してしまったのです、私。ですから、当然遠慮なく頂きましたよ。上司は、お座敷に上がろうとしたのですけど、私はいきなり阻止した訳です。だってそうじゃないですか、折角の超有名高級店。
しかも、テレビで見た事のある大将がその日珍しく板場に立っていたんですよ、座敷に上がるなんてそんな勿体ない事出来る訳ないじゃないですか。仕事の話しもあるから、と座敷に尚も上がろうとする上司に向かって、お寿司は目の前で握って貰わなくては意味が無いと豪語した私。その一言で大将にえらく気に入られ、大将の目の前に座らせて貰う事ができましたよ。光栄の極み。上司が青ざめている横で、私はガンガン注文していくわけです。高級魚のクエの握りを始めとして鮭児に海水うに、大間のマグロの大トロの炙り、すっぽんの煮こごり、全部で30カンくらいは頂いたでしょうか。上司はちびりちびりと冷酒を飲みながら只管汗を拭っていました。
仕事の話しをする気も無くなったのでしょうか、私と大将の会話を聞いて頷くばかり。最後にあがりを頂いて上司がお会計に向かいました。ちらっと見るとお札を数えるのを途中で止めてカード払いにしたようです。でも、そのお店さすがカード払いにするお店ですよ、口の中でホロホロと溶けるようになくなっていくお寿司の味、今もしっかり覚えているのですもの。あれから2度と会社の上司には誘われなくなりましたけどね。